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2月11日の「建国記念の日」に反対することが、今、持つ意味
-戦前の歴史教育・紀元節を振り返って-

2013年2月4日



丸浜 昭さん(一般社団法人歴史教育者協議会事務局長)

歴史意識は現実をとらえる大きな土台

 歴史意識を眠らされるとはどういうことか、フクシマのことで考えてみます。今も原発事故の被害が続くフクシマで、「一連の事故が、まるで遠い昔の、どこか別の国の出来事であるかのように錯覚させ、復興元年の名の下に、「普通」で「日常」の生活へ戻そうという事態が進行している」と、ある教員が訴えています。安倍晋三首相の原発再開、新規建設さえ推進しようという発言は、このフクシマでの動きと軌を一にし、3.11の歴史的体験と被害を全く無視し、破綻した原発安全神話の復活をはかるものです。先の教員は、次のよういいます。「人々はアジア太平洋戦争終結時、『知らなかった』と言い、今回は『安全神話に騙された』という。もういい加減にしようではないか。私たちは主体的に学ぼうとすれば、いくらでも学ぶ事ができる。そのためには、どんなにつらくても『事実を事実として見つめる』ことからしか始まらない。子どもたちと、そして全国の仲間とともに進みたい」。しっかり受け止めたいことです。
 3.11というつい最近の歴史さえ、私たちが自主的・自覚的に学ばなければ、本当のこと、大切なことが見えなくなります。そしてそのためには、都合の悪いことには目を向けさせない動き、さらに安全神話というような事実とことなる都合のいい考えをおしつける動きに立ち向かわなければならない、ということが大事なことだと思います。

戦前の歴史教育の反省から学ぶこと

 この都合の悪いことには目を向けさせない、神話のようなものを押しつけるというようなことをやりがちなのが時の政治勢力です。そのことで日本の国民が大変悲惨な体験をしたのが、戦前の教育、とりわけ歴史教育でした。戦前の小学校では縄文時代などは教えられず、教科書は国定で、日本の歴史は神である天皇が空から降りてきたという神話から始められました。そして、天皇を中心にした歴史を学ぶことを通して、子どもたちには、天皇への敬愛の念、日本は神である天皇が治める特別な国であるという意識が巧みに刷り込まれ、天皇と国のために、死も厭わず戦場に出かけていくように育てられました。
 2月11日を戦前は紀元節といい、神話に記された神である初代天皇が即位した(日本の始まり)とされる日でした。日清戦争でも日露戦争でもこの2月11日に向けた作戦が展開され、紀元節を利用した日本軍大勝利の報道がなされ国民を興奮させました。学校では、この日には厳かな儀式が行われ、校長はありもしない神武東征の神話や皇室のありがたさを説き、幼い心に日本は神の国、特別な国という意識が植え付けられたのです。こうして刷り込まれた歴史意識は、アジア太平洋戦争に人々を引き込む上で決定的ともいえる大きな役割を果たしました。私たちは、国・政府が学校教育などを通して人々の思想を統制してきたこの戦前の歴史を深く反省し、その歴史の象徴であるかつての紀元節が「建国記念の日」とされたことに反対して集会を続けてきました。それは、私たちが思想の自由を守り自主的・自覚的に歴史の真実を学ぶことに対し、国・政府などが教育や学校を通して国民の歴史意識を操ることを絶対に繰り返させてはならない、と考えるからです。かつての紀元節建国記念の日とすることは、この戦前の歴史の反省を曖昧にし、それに目を向けさせないことにつながります。

安倍内閣下の今日の日本は…

 このように戦前の歴史を振り返り、「建国記念の日」に反対する取り組みの意義を思い起こしながら、私は、今の日本は大変重要な岐路にあるという思いを深くします。
 まず安倍晋三氏自身が大変偏った歴史観の持ち主であることを重視しなければなりません。もちろん、安倍氏がどのような歴史観、思想を持つかは自由ですが、日本の首相の歴史観に無関心、無批判でいていいということではありません。
 首相の歴史観は2012年11月4日にアメリカの米ニュージャージー州地元紙に出された「従軍慰安婦」に関する意見広告にも示されています。ここでは、「慰安婦」に売春の強要はなく「公娼制度の下で働いていた」などと述べられ、安倍氏は、こうした主張を従来から繰り返してきた人びととともに名前を連ねています。見逃せないことは、その中から4人が今回の安倍内閣に入閣していることです。安倍氏は今回の内閣の下に置かれた教育審議会などの組織に、こうした歴史観の仲間といえる人々を積極的に登用しています。そして、安倍氏は、首相就任直後から、侵略戦争の反省をのべた「村山談話」や、従軍慰安婦の強制の事実を確認し謝罪を示した「河野談話」に替えて、未来志向などの美名のもとに過去を覆い隠す「安倍談話」を出すことへの執着をみせています。
 さらに、今日、安倍政権に接近する石原慎太郎東京都知事や、関東近県、大阪などの自治体首長にも同様の歴史観を持つ政治家が多く見られ、地方自治体の首長による教育行政への口出し、歴史教科書や歴史教育への介入などが起こされてきていることが見逃せません。
 重大なことは、この行き着く先として日本国憲法を変えることがめざされていることです。自民党が選挙にあたって掲げた「日本を取り戻す」という公約の最後には「日本らしさを憲法に」と記されています。安倍氏をはじめ、ここで触れてきた政治家たちは、ほとんどが日本国憲法「改正」をめざすことを公言し、そのために連合する動きもみせています。それは、この人々は、あの戦争は日本の自衛のためのもの、侵略はしていない、アジアの解放のためのものだったなどといい、戦争の反省から生まれた日本国憲法がもつ意義を否定し、占領したアメリカが押しつけた日本にとって好ましくないものととらえているからです。そして、いろいろとわかってきた戦争の事実ときちんと向き合うのではなく、この人々の偏った戦争観と日本国憲法への偏見や嫌悪感を国民に押しつけようとしているのです。

全国で各地で行われる2.11集会へ

 今回の選挙結果について、議席数では60%をこえた自民党の得票率は、比例代表の結果でみると全有権者比の約16%に過ぎないと分析されています。安倍内閣は事実として世論の委託を受けたものではなく、まして世論を代表するものではありません。今私たちには、日本国憲法が持つ積極的な意義を含めて日本の歴史・社会について自主的・自覚的に学び、アジアの中でそして世界の中で、日本がどういう歩みをしていくべきかをきちんと考えることが求められています。
 2月11日には、今の日本は重大な岐路にある、この日を単なる休日にしてはいけない、という思いを同じくする人々が、北海道から九州まで、全国各地で様々な形で集会を持って学びあい、声を上げます。多くの方がこうした動きに目を向け、参加されることを呼びかけます。
 各地の2.11集会については、歴史教育者協議会のHPをご参照ください。

◆丸浜 昭(まるはま あきら)さんのプロフィール

横浜市立大学・早稲田大学大学院卒。
都立高校・筑波大学附属駒場中高校の元教員。
歴史教育者議会(歴教協)の会員となり近現代史の分野を中心に歴史教育・歴史学を研究し、『東京の歴史教育』『歴史地理教育』などに執筆。定年退職後、同会事務局長として勤務。獨協大学で近現代史、都留文科大学で地歴科教育法を担当。