gesel's diary

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日銀

日銀の金融政策ではどうにもならない日本経済

 
 

外人買いによって日本株も持ち直している。外人は2月第3週まで8週連続で買い越した模様で、その間、日経平均株価は約1,000円値上がりした。リーマン以前の水準に回復した後もNYダウは買われ、13,000ドル目前まで上昇したことも日本株を後押ししている。昨年10-12月期の日本や欧州のGDPが前期比マイナスとなり、景気が悪化したにもかかわらず、株式に金が流れ込みつつある。さりとて、債券が売られることもなく、利回りは歴史的低水準のままだ。商品市況も堅調であり、WTIは再び100ドルを突破した。

このように金融商品といわれるものの値段だけが値上がりする状況を引き起こしているのは、FRBや日銀のゼロ金利政策である。特に、FRBの実体経済を無視したゼロ金利の長期保証が、金融関係者に投機的確信を植え付けているのだ。信用状態は米国も欧州も不確かだが、投機的確信だけは持ち合わせている。なにしろ金融機関等の金の卸売り業者は、ほぼコストゼロで資金調達することができるのだから、わずかの鞘が抜ければ、利益がでるのである。しかも、米国の消費者物価指数(食品・エネルギーを除く)は1月、前年比2.3%上昇しており、金融債務者にとっては有利な経済環境になっている。物価が上昇しているので、借金の実質的な返済負担は軽くなるので、余計に金融業者は金を負債に積み上げ、それで金融商品を漁ることになる。FRBの金融政策は金融業者にこうした行動を積極的に取らせるように働きかけている。

1月25日にFRBが公表した2012年の経済見通しによると、PCEコア(個人消費支出物価指数、食品・エネルギーを除く、第4四半期の前年比上昇率)は1.5%~1.8%と想定されている。CPIコアが上昇傾向にあることから、PCEコアは想定レンジを越える可能性が高い。CPIコアは2010年10月(前年比0.6%)を底に上昇し続けており、1月は08年9月以来3年4ヵ月ぶりの高い伸びだ。PCEコアは昨年12月、前年比1.8%上昇しており、2012年の想定の上限に達している。CPIコアとPCEコアはほぼ同じ歩調を辿っているため、今後、PCEコアは上限を突破し、FRBは2014年後半までのゼロ金利継続方針を撤回しなければならなくなるだろう。

FRBの総資産は2月15日時点で2.94兆ドルと前年よりも4,275億ドルも増加している。負債で増加しているのは金融機関からの預金であり、FRBはこれらの資金を米債に振り向けているのだ。資産の大半は米債等の証券で占められており、総計2.62兆ドルもの証券類を保有している。調達コストは限りなく低いため、利鞘を2%と仮定しても、FRBには年524億ドルもの利益が転がり込むことになる。金融機関は法定額をはるかに上回る準備預金を積み上げ、それがFRBの米債購入資金として使われているのである。FRBにとって資産の拡大は、利益の増大に結びつく最大の政策なのである。問題はギリシャのように債務不履行の事態に陥ることだが、ドル基軸通貨体制下では、そのようなことは起こらないだろう。むしろ物価上昇が進行し、米債が売られ利回りが上昇していくリスクのほうが大きいのではないか。米10年債利回りが2%程度というのは、実体経済に照らし合わせると、いかにも行き過ぎである。

FRBに倣って日銀もインフレ目標を掲げ、資産買入額も10兆円上乗せし65兆円とした。日銀の措置によって、株高と円安ドル高が進行した。だが、株や為替への効果は一時的で持続はしないだろう。日銀は国債の購入を増やすというが、金融機関は十分な預金を抱え、預金を持て余しているのだ。持て余してところに日銀はさらに資金を供給しようとする。資金供給を受けても金融機関は国債の購入に回す以外には使い道はないのである。つまり市中に資金は出て行かず、日銀の買いオペは直接的には実体経済に何の影響力もないのだ。単に、金融機関の国債を日銀が入手し、金融機関は国債を売った現金でまた国債を買うことになる。日銀が国債の消化を後押ししているだけなのだ。日銀は新発債を購入することはできないが、金融機関の国債を吸い上げることによって、新発国債の消化が順調に運ぶようお膳立てをしているといえる。それによって、国は歳入を確保し、財政支出することで経済を支える。このように日本経済の落ち込みを、公的支出を確保することで支えてはいるが、買いオペが民間に資金を供給する機能はほとんど果たされていない。

90年代半ば以降、消費者物価指数は前年割れが目立つようになり、日本経済はデフレに陥った。97年4月、消費税率を引き上げたが、翌年度の98年度のCPI上昇率は0.2%に低下し、99年度以降は7年連続のマイナスになった。人口減という需要のマイナス要因が、日本経済を覆っており、インフレ目標など無意味だ。すでに日銀は10年以上ゼロ金利を続けているが、日本経済はそれにまったく反応していない。デフレではゼロ金利にしたところで、実質金利はプラスであり、経済を好転させることはできない。

日銀はとっくに無能ぶりを曝け出しているが、この期におよんでも思わせぶりな金融政策を発表する図太さ、原子力委員会や原子力安全委員会と同根ではないか。金融政策というと外部の人間は尻込みするが、日銀を始めとする金融関係者だけに金融問題を任せるわけにはいかない。金融問題は原発のように命や生活を奪われることはないが、空虚な金融政策決定会合を正すだけでも、時間と金の無駄が省ける。国家公務員の給与削減が俎上に載せられているが、日銀も同じかより厳しくリストラをしなければならない。

米株が値上がりし、欧州の債務問題も解決に向かいつつあることが、日本株上昇の原動力になっている。ただ、株価を決める利益は大幅な減益である。昨年10-12月期の大企業22社の営業利益は前年比22%減と5四半期連続の減益だ。日経平均株価の予想株価収益率は20倍を超えた。日経平均株価の予想株価収益率は米国、英国、ドイツなどに比べて高く、日本株は割高である。株価の上昇とともに売買代金は膨れており、ここにもゼロ金利の影響をみることができる。

売買回転率(東証1、2部、マザーズ計、出来高)は04年に100%を超えてから昨年まで8年連続の100%超という異常な状態を持続している。04年以前はバブル期の1988年(98.1%)が最高であったが、昨年でさえもそれを凌ぐ138.4%であった。

売買代金と実体経済を比較しても実体経済とは釣り合わない売買が行われていることがわかる。長期の売買代金(東証1部)・名目GDP比率を辿ってみると、1989年と2007年にふたつの大きな山がみえるが、後者がはるかに高い山を成しており、ゼロ金利による投機が最高潮に達していることを読み取ることができる。いまはその山を下っているが、昨年の売買代金・名目GDP比率は72.5%とピークの07年(143.4%)に比べれば半分ほどになったが、バブルのピークである1989年(79.8%)とは遜色はない。いまは再び1日の売買代金が1兆円を越えているが、これは活況を通り越し、投機が渦巻いている状態なのである。株式流通市場だけが盛るという状態が続いている一方、実体経済は衰退の一途を辿っている。1億総博徒になれば経済は良くなるとでもいうのだろうか。博打が経済を活性化させるなど戯言も休み休みに言え。株式流通市場ではなにも新たに生み出されはしないのだ。流通市場が活況を呈して儲かるの胴元だけであり、博打場とまったく同じである。ゼロ金利が博打場に人を誘い、実体経済をスポイルさせているといえる。